つぶて

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 その男は好き嫌いが激しかった。食は偏り、遊びは変わらず、人付き合いは限定されていた。偏狭な自分に嫌気がさし、男は一念発起、好き嫌いをなくすことを心に決める。様々なものを食べ、いろいろな遊びをし、人を選ばず交流した。血の滲むようなの努力の末、男は無我の境地に達する。すなわち、どんな事も好きでも嫌いでもないと感じられる領域に己を置くことに成功したのだ。
 好き嫌いをなくした男は、世の中がつまらないものだと気付いた。特に好きになれるものが無かったからだ。

6/12/2023, 2:12:28 PM