おとなさま

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蝶を、花を、繊細なものを触るように彼女に触れなさい。

そんなばあちゃんの教えをずっと守ってきたはずだったのに、俺の隣で彼女は泣いている。

「不安だった」
「もう私なんていらないんだって思った」
「ねえ、何か言ってよ」

彼女は繊細であり、蝶であり、花である。
そんな繊細な花を壊さないよう、俺は彼女をより一層優しく扱わねばならない。

「ごめん」

ようやく絞り出した言葉に、彼女はなぜかまた涙を流してしまう。

「もう、いい」

俺はなにか、間違えたらしい。
彼女の中のガラスは壊れ、蝶は飛び、花は散ってしまったようだ。


ー繊細な花ー

6/25/2024, 3:19:33 PM