霜月 朔(創作)

Open App

手紙を開くと




私の元から去って行った貴方。
始まりは、小さなすれ違い。
お互いを想い合っての行動が、
お互いを傷付ける事になって。

貴方を嫌いになったことなんて、
一度だって無かった。
だけど。
素直に、ごめんなさい、って、
言の葉に乗せるには、
お互い、余りに青かったんだ。

まだ、
貴方が私の隣にいた頃の、
懐かしい想い出に縋ろうと、
引き出しから取り出すのは、
貴方からの手紙。

手紙を開くと、
そこに並ぶのは、
真面目な貴方らしい、
几帳面な文字。

ほんのり花の姿が透ける、
繊細なデザインの便箋。
何度も読み返すうちに、
少しずつ、付いていった、
小さな折れ目。

もう一度。
貴方とやり直したい。

そんな想いを、
手紙に書き綴り、
何度も貴方に送ったけれど、
貴方からの返事は、
一度も返ってこなかった。

それでも。
私は諦められない。

だって。
手紙を開くと、
そこには、
私を愛していると言ってくれた、
愛しい貴方の言葉が、
未だ残ってるから。


5/6/2025, 6:32:44 AM