Amane

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ところにより雨

『〜〜県は、ところにより雨となるでしょう。折りたたみ傘などを準備しておくとよいですね。』
う〜ん。折りたたみ傘を持っていくべきだろうか。カーテンの隙間から外を見ると太陽が堂々と仁王立ちしている。湿気のしの字もないようなカラッとした空気を感じて、『ところ』がここではないと確信した。

用を済ませて帰る頃には、ドヤ顔の太陽も俺に恐れ慄いたのか姿を隠していた。気温は下がったものの、相変わらず雲ひとつない空であった。
「この辺りにするか……。」
隣を歩いていた中肉中背といった感じの男が突然歩みを止めた。そして指先を天に向け始めた。
……サーーー
雨!?俺の真上、いや男の真上に突然雲が集結しだし、紛れもない雨が俺の髪を洗う。
「お、おい!何してんだよ!」
よくわからないまま、そいつの肩を掴んでしまった。
「ふっ。バレちまったかっ。」
「そうゆうのいいから!止めろよこの雨!」

そいつ曰く、天気予報の信用性を上げるために降らせているのだとか。
「もっと他のことに生かせよ。」
「晴らすなら使えるけど、雨降らす能力なんてどう使えばいいんすか……。」
そいつなりに悩んでいるようだった。
「俺の実家さ、農家なんだけど、去年の夏雨降んなくて育たなくて大赤字よ。」
「はっ!そこに降らせばいいのかっ!あざっす!」
「教えたからこの雨止めてよ。」
「ええ〜それはないっすよ……。」

突然の雨も悪くないなと思った。

3/24/2024, 11:07:11 AM