微睡みの中

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【#09. 届かないのに】
あなたを想うことはやめたはずなのに
まるでひらひらと舞う蝶を見たかのように
気がついたら目で追ってしまう

あなたには私と違うものをたくさんもった
あの人がいるのに

あのとき
なんでもない日のあなたとの会話で
告げられた一言
あなたは得意げにそして嬉しそうに
あの人は俺の彼女だと教えてくれた
その瞬間、暑い世界がいつもより
モワッと、1層暑く、まどろしい暑さになって
周りの音が消えた
「いいですね!お幸せに!」
なんて言えたら良かったのに
私はぎこちない
「あ、、そうなんですね。いいですね」
しか返せなくて
自分のことをなんて惨めな生き物なのだろうか
と悟った

あなたの彼女を嫉妬できる人であれば良かったのに
あなたの彼女は私の知り合いの先輩で
いわゆる同い年カップル
私とあなたとでは1つ学年が違う
そのことをまず恨んだ
そしてあなたの彼女は
私の知り合いの先輩であったことに
恨みきれず、妬みきれずにいた

私の中てぐるぐると渦をまくように
あなたを純粋に好いてた自分を
なんて馬鹿なんだろうと思う気持ちがさまよう

それでも私はなんで
グラスに入った氷が溶けていくように
この思いを溶けさせないのだろう

今日も明日も私はグラスに入った氷を溶かさずに
冷凍庫に入れ、保存して外に出させないようにしている

もう届かないって分かっているはずなのに

6/17/2025, 1:57:18 PM