冷瑞葵

Open App

願い事

 シンプルなお題だからこそ、なかなかいい案が思い浮かばない。
 ……って、毎回言ってるかな。「お題を見た瞬間に面白いアイデアが浮かんできた!」って言えるときなんて全然ない気がする。
 ならば「もっと良いアイデアが浮かぶようになりますように」とか「もっと面白いお話をたくさん書けますように」が私の願い事になるかと言われると、それも違う。そりゃ願ってはいるけれど、星に叶えてほしい願いではないのだ。
 昔はたくさん願い事があった。大抵は「〇〇になりたい」という子供らしい願いだった。いつしか、世界平和とか健康ばかり願うようになった。もはやそれらを願うことすら無駄だと思うようになった。
 自分の願いは自分で叶えたい、と言えば聞こえはいいけれど、残念ながら私にそれを実現させるほどの意欲はない。星に願ったって無駄、自分で叶えるしかないがそれも不可能、だから全て諦めよう……という、なんとも悲しい結論に落ち着きそうになっている。
 あーあ。願い事って何なんだろうな。願う先に人類は一体何を見ているのだろうか。
 子供の頃、「完全に相手任せだと向こうも願いを叶える気なくなるから、自分でも頑張りますって伝えるんだよ」って親に言われたっけ。他力本願で望みを叶えたいから人は願い事をするんじゃないのか、と子供ながらに思ったものだ。他力本願でいられないなら、願うことに意味なんかないじゃないか。
 仮に、本当に願いを受け取ってくれる上位の存在が居たとして、その人は何を思うのだろうか。私だったら人々の悩みを微笑ましいと笑いながら静観しているな。本当に頑張っていて、その上でどうしようもない状況に陥ってる人には少しくらい手を貸すかもしれないけれど。多分私のイメージする「上位の存在」から見て、私は助ける対象ではない。
 じゃあ、「上位の存在」が助けなきゃって思うほどの不幸には落ちないでいたいな、と温室育ちの平和ボケみたいな望みを片手間で願っておこう。ついでに、不幸に落ちたときは助けてくださいっていうのも願ってみよう。
 こんな罰当たりな人間もいつか救ってくれるのなら、願い事とやらの価値を私はようやく認められるでしょう。今はまだそのときじゃないや。

7/8/2025, 4:23:38 AM