君と見た虹
30年連れ添ったあなたと手を繋ぐ。
若い時はあんなに節が大きく分厚い手だったのに、今は痩せて皮膚も薄くなってしまっていた。
呼吸が上手く出来ない為、酸素マスクをしているあなたの顔をじっと見つめる。
若い時に、恥ずかしげもなく愛していると言ってくれたその唇は、酸素を吸う為だけに開かれている。
半眼の目は、私を見ているようで、どこか遠くの空の上の人を見ているかのように、宙を彷徨う。
祈るように床に膝をつき、あなたの横で、あなたの右手を両手で握りしめる。
あなたは一瞬、瞳を黒くし、私を見た。
私は頷き、ゆっくり眠るよう伝えた。
あなたは弱々しく、私の手を握り返した。
ベッド横のテレメーターの波形が下がり始め、時が来たのだと鳴り始める。
私もあなたと虹を渡りたい。
額を右手に擦り付けながらそう願った。
2/23/2025, 7:11:56 AM