300字小説
二十歳の神事
この家には二十歳の夜に行われる神事がある。二十歳になった者は三宝に酒の入った瓶子と盃を乗せ、家の一番奥の神棚の部屋に参る。そして、家神様と一夜を共にするという。
今夜、私はその神事を行う。しんと静まり返った夜半過ぎ。カタカタと神棚が鳴り、扉が開く。家神様が三宝の前に降り立ち、私に問う。
「酒は好きか?」
「まだ飲んでませんが、おそらく」
「そうか」
家神様が盃に酒を注ぐ。
「なら、儂がお前に正しい飲み方を教えてやろう」
うちの家神様は酒好きで、代々二十歳の子と酌み交わし、楽しい酒を飲む術を教えていらっしゃる。
「ご教授ありがとうございました。気をつけて参ります」
神棚に手を合わせ、私は初めての飲み会に向かった。
お題「20歳」
1/10/2024, 11:30:24 AM