「ぬるい炭酸と無口な君」
side.A
今時珍しい様な、昔ながらの喫茶店。
君はぬるくなった炭酸水をストローでかき混ぜながら、沈黙を貫いている。
僕も何も言えなくて、ひたすら縮こまって俯いてる。
解ってる、僕が全部悪いんだ。
最初に声をかけたのは僕だった。
彼女が居たのに、何だか寂しそうにしている君が気になって、ついつい声をかけてしまった。
そして、誘われるまま関係を持ち、彼女とは別れたけど、そのままズルズルと今日まで来た。
恋だったのか?と聞かれると、正直自信を持ってYESとは言えない。
成り行きとか、情とか、そう言った方がしっくりくるかもしれない。
勿論、欲があった事も確かだと思う。
でも、きっとこれが恋なんだ、愛なんだ、きっと皆そうなんだ、と自分に言い聞かせながら、何だか止め時もなくズルズル今日まで来た。
でも、僕に本当に好きな人が出来て。
このままで居られなくて、君にその事を告げて、今。
もう本当に僕が悪い。
ただ君を遊んだだけになった。
どう言われても、どう責められても、何をされても受け止めるから。
だから黙らないで。
お願いだから、キチンと終わらせて。
side.B
別れ話の後は黙り込んだ貴方。
きっと、自分に都合が良い風に色々考えてるんだろうな。
私が貴方に真剣で、別れたくなくて。
でも、自分には次に好きな人が居るから、兎に角穏便に別れたいって。
馬鹿みたい。私全く気持ちないし。
ってか、これ仕事だから。
貴方と別れたい元カノに頼まれたから。
普通に別れると、貴方、ストーカーになりそうで。
妄想癖もあるから、ある事ない事言い触らされそうだし。
だから、貴方が浮気して後腐れなく別れる為に、私に頼んだの。
で、思った以上に貴方はクズで、ホントに仕事でも私はうんざりだった。
彼女とも別れたし、私も後腐れなく上手く別れようと思ってたけど、ちょっと下手すると拗らせそうだったから、慎重にしてた。
そんな時に貴方からの別れ話。
これでやっと離れられるから、ホントは嬉しくて堪らないけど、でも貴方の妄想通りに合わせないと、又後々面倒そうだし。
だから、合わせてあげる。
大好きな彼に別れ話をされて、言葉を失う女。
不機嫌になって、従順じゃなくなって、可愛くない女。
そうすれば、貴方は別れた後に後腐れなくなるし、私も安心。
馬鹿な貴方は、自分の妄想の中で、自分勝手に「いい男」を演じていればいい。
そして、女達の掌で転がされて居ればいい。
いい思いもしたから、いいんじゃない?
side.C
あのカップル、別れ話で気まずそう。
聞くともなく話が聞こえてきたから、彼女が振られる側かな?
でも、正直どっちも性格悪そう……
店員さんに対する態度とか、物に当たったりとか、どっちも感じ悪いし。
可哀想だとは思うけど、何か同情出来ないなぁ………
8/3/2025, 11:30:53 AM