飴玉

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「ねーっ、この服どお」
「どおって言われても…」
「似合うって言ってよ、父親でしょ」
「そうだけど…気になるなら買ったら?」
「お金勿体ないから」
買うのは自分なのに、頬を膨らませてあれも違うこれも違うと試行錯誤している。結局、悩みに悩み、買ったのは灰色のアイシャドウだった。
「これね、グレーシャドウって言って、黒髪に合うんだって」
「そうなん?変じゃない?」
「変じゃない!もう帰る」
「なんか食べていかへんの?」
「太るし、いい」
「たまには食べたら?」
「じゃあ食べる!でもいいの?パパ中年だから、太ったら痩せにくいんでしょ」
痛い所をつかれた。フライドポテトを注文して、届くのをじっと待つ。他人となら気まずい無言も親子ならそうでも無いのはなんでだろうか。
「パパはさ、ママと離婚して正解だよ」
「うん」
この言葉に、どうしていいかいつも詰まってしまう。どう返すのが正解なんだろうか。
注文していたポテトが届いた。
「えっ」
「何?」
「雪降ってる」
「まぁもう12月やから」
「新年近いと色々めんどい、パパは大掃除とか衣替えとかするん?」
「仕事忙しいしそんなんはあんまりしーひん」
「パパの住所特定出来たら掃除くらいならすんねんけど」
衣替えは流石にしないらしい。まぁ、父親の下着をうっかり見るようなことがあったら娘にとっても自分にとってもなんとなしに嫌だ。
「じゃ、そろそろ帰るか」
「うん。お誕生日おめでとう、あと、メリークリスマス」
「メッセージ送ってくれてたやん」
「リアルで言うのとメッセージは別」
まぁ、そうなのかな?と内心首を傾げた。
「じゃ、またね」
「ばいばい」

10/22/2024, 11:39:21 PM