幼稚園の頃からずっと遊んでいたあの子が、小学校三年生のとき、神隠しにあった。▼
昔から、もうすぐ梅雨になるなって頃に、国内のどこかで子供が攫われるらしい。▼
あの子が選ばれてしまったと思うと、腹が立ってしまう。▼
別に俺でもよかったじゃないか。▼
なんで。▼
もっとあの子と遊びたかった。▼
話したかった。▼
一緒にいたかったのに。▼
それなのに……。▼
許せなかった。▼
でもそれは神様のことが、ではなくて、自分が一人になってしまったことに対してだった。▼
なんて身勝手なんだ、俺は。▼
呆れてしまった。▼
もう二度と会えないとか、跡形もなく姿を消してしまったとか、そんな事をもう言わないでほしい。▼
あれから十年か。▼
気持ちの整理がついてもうしばらく経っていた。▼
申し訳なさはまだ残るけど……。▼
ーーでもたまに、本当にたまに、思ってしまう。▼
生存なんて言葉、この状況に一番相応しくない言葉なのに。▼
もしかして、もしかしたら……そう思ってしまうんだ。◾︎
3/1/2023, 1:29:17 PM