白樺

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僕には3歳上の優秀な兄がいる。
完璧、それが兄を表すのに一番ふさわしい言葉だろう。
クラスの人気者で学校でも近所でも声をかけられる。
方や弟の僕。普通、平凡を体現したような僕は兄と昔からよく比較されている。
比べられるのが嫌で嫌でたまらなかった僕は努力を人一倍した。テストは上位10位以内を三年間キープした。運動も部活の選手に選ばれ勝利に貢献した。けれど頑張れば頑張るほど兄と比べるんだ。兄はもっと優秀だったと。
中学卒業間近、一番仲が良かった先生に「月とスッポン」と言われたが不思議と怒りは来ず、ストンと心に落ちた。
スッポンは月には勝てない。月の方が綺麗だしサイズだって大きい。
その時、そうか僕は大前提として「兄と立っている土俵が違う」事を理解した。
ちょっと前の自分だったら理解したくなかっただろう。知りたくなかっただろう。だって兄弟という関係はお互い対等な物だと思っていたから!。
勝てるとか、僕の方が優秀だとか誰でもいいから認められたかった。
そう思った瞬間、夢から覚めるようなハッとした感覚に襲われる。放送委員が下校時間のお知らせを言うので急いで帰ろうと足を踏み出す。今までで一番、足が軽かった。
高校は地元から離れた場所に通った。中学は運動部に入ったが元々は文化部に興味があり美術部に入部した。
人間、向き不向きがあるように僕は運動が向いていなかった。努力したことは後悔していない。僕よりも凄い人がいたのに自分が一番だと思い込み視野が狭くなっていたのにやっと気付けた。だから解った。兄も努力をしていたのだ。才能の塊だと思っていた兄も努力をしていた。兄だって不完全だった。
僕は不完全だ。けど、不完全な僕も気に入っている。
それに完璧な人間なんて存在しないからね。

俺には、弟がいる。普通という言葉が似合う奴だ。
周りの人は俺に完璧を求めてくる。誰だって俺が不完全な存在だと思わないのだ。
勉強は元々好きじゃない。けど人一倍努力をした。期待された思いに応えたかった。
なのに頑張れば頑張るほど努力を消され才能だけで生きている様に言われる。誰でもいいからを努力を認めて欲しかったよ。
目の前で無知な顔をした弟が憎い。
あぁいけない。こんな感情を抱いてたら完璧じゃない。俺は不完全ではいけないのだから。

8/31/2024, 3:53:41 PM