モンシロチョウ、紋白蝶、もんしろてふ、学名pieris rapae。Artogeia rapae crucivoraだったりもする。卵はキャベツにつけるし幼虫はキャベツを食うので英語ではcabbage butterfly、あるいはsmall cabbage whiteなどと。
ピエリスはギリシアの知的活動を司る神々ムーサ(ミューズ)の別名、または別個の神らしい。よくわからない。クラクラとする頭でぼんやりと周りを飛び回る紋白蝶を認識する。
少し指を差し出せば待つこともなく蝶が留まる。時折去来する空腹を誤魔化すために留まった蝶を口に含む。鱗粉が呼吸器を満たし眼球を突き刺す。ここには何も無い。
自分の下にあるハッチの向こうは溝と油と血の溜まり。掠って出てくるのは自分の骨だ。底は堆積物で見えず、堆積した泥だか糞だかはそこそこの高さかもしれない。
輝き舞い散る鱗粉が僕の眼球を突き刺す。下の溜まりは顔を突っ込むと僕が叫ぶ。脳が焼き切れる。これは推して参るか退却か。策は思いつかない。骨も僕なら飛び回る蝶も僕だ。
何も見たくなかったからハッチを付け、ここを何も無いものにした。ここには蝶の留まる花も作物もない。そうなるべきだったものを僕は骨にして沈めたから。復元した僕の経過観察をする。
5/11/2024, 6:18:06 AM