noname

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夕方、君と2人で並んで歩く。
今日は惣菜を安く買えたねなんて言いながら、僕たちの家に帰る。夕日に照らされた家々を通り過ぎ、黒と橙色の縞模様ができた道を歩いていると見知った街が見知らぬ街に変わっていく。
のびていく自分の影を見つめていると、いつの間にか君は僕より数歩先を歩いていた。ご機嫌に歩く君の背中を暫く眺めていたが、僕はどうしてか不安になって、君を呼び止めた。
「ねぇ、ちょっと待って。」
君は不思議そうに振り返った。夕日が眩しい。僕は今どんな顔をしているのだろう。
「…もっと、ゆっくり帰らない?」
夕日が沈んでいく。最後の灯火とばかりにいっそうと煌めいて、日を背にした君の表情は見えなくなってしまった。
「そうだね。ゆっくり、帰ろう。」
夕日が沈んだ。辺りは急に真っ暗になった。
僕は左手に確かに君が居ることを感じながら、いつもの道を歩いていく。

『沈む夕日、君とともに』

4/8/2024, 9:58:19 AM