鏡の中の自分に聞いても、言葉を繰り返すだけだ。
そのことは何度もやったから、分かっている……だけど、どうしてもやってしまうのだ。どうしてもあの子に、縋ってしまう…頼ってしまう…泣きついてしまう………あぁ、私は。
『⸺ぃでぇ……ぉいでぇ………ここに、おいで…』
少し前から、呼ばれている。
あの子が呼んでいる。
行かなきゃ…たくさん、頼ったから。
あの子の隣に居なきゃ…。
◆◇◆◇◆
「ねぇ、聞いた?」
「え、なになに?」
「あそこの家の長男がガラス片で喉を刺して病院に運ばれたって話よ」
「まぁ…確かあの家って、聖堂のステンドグラスが壊れた時に下敷きになって死んでしまった女の子がいるんじゃなかった?」
「えぇ、そうよ。その件以来、あそこの家は窓に板を打ち付けたり、鏡を捨てたりしていたのよ」
「あらそうだったの……心配ねぇ」
「えぇ、本当に」
◆◆◆◆◆
あぁ…残念、今回は失敗したなぁ。
次の機会を待って、あの馬鹿正直なやつを揺さぶるエサにしないとだなぁ。
【悪魔は敵を弱らせる一手を手に入れたい】
11/4/2024, 6:18:55 AM