「特別な存在」
自分は生まれてこの方孤独ばかり感じていた。
家族どころか、行く先々でまるでいないかのように扱われる、静かで平穏な日々。
自分にとっては、それが当たり前だった。
揺り籠から墓場まで、そういう日々が続くんだ。
そういう確信めいたものが、自分の心の中にあった。
だから、今日にも明日にも明後日にも、思い入れなんてないつもりだった。
だけど、あんたが突然現れたんだ。
ミントグリーンの髪で、やたら目がキラキラした、声のデカい自称「マッドサイエンティスト」だというあんたが。
それからというもの、あんたの「宇宙を救ってくれ」という頼み事を解決していく日々が今も続いている。
あんたは少しずつ自分たちの国の暮らしを理解して、あんたのペースを自分に合わせてくれた。1ヵ月ぶっ通しでずっと起きてても平気そうだったのに、「まぁ最適化は大事だからね!!!」とか言って。さすが「チョーカガクテキソンザイ」なだけはある。
それから、「温泉たまごトースト」とか「ホンビノス貝の味噌汁」とか、よく分からんけど美味い料理も作ってくれる。
他にもあんたは色んなことしてくれてるよな。
ニンゲンの感情のことを考えたり、宇宙の構造のことを教えてくれたり、それから、自分と友達になってくれたり。
自分に初めてできた、友達。
気恥ずかしくて直接は言えないけど、自分にとってあんたは特別な存在だよ───
「な〜にを一人でべらべらと独白しているんだい???ちったぁ洗い物のひとつでもしたまえよ!!!」
しまった!いつの間に!!
「へ〜ェ、ボクがキミにとっての特別な存在かぁ〜!ま、悪くないね!!!」
「それはそうと、そろそろあのアニメが始まるよ!!!テレビをつけたまえ!!!」
全く、やかましいやつだな……。
でも、あんたのおかげで、毎日がちょっと楽しい。
言われた通り、自分はテレビの電源を入れた。
3/24/2024, 10:01:49 AM