シオン

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 演奏者くんはボクに好意を持ってくれたりするんだろうか。そこんところは正直よく分からない。
 ただ、彼はきっとあまりボクに対して悪口は言わないだろう、なんて感じがした。
「…………ボクのこと、嫌い?」
 それなのに、まるでメンヘラのようにボクはそう聞いてしまった。
「……え?」
 演奏者くんは頭にハテナマークを浮かべて、困ったような顔をした。
「…………好き?」
 説明をきっと求めているであろう彼に、重ねるようにそう聞くと、眉をひそめつつ彼は口を開いた。
「…………嫌いじゃないよ」
「…………」
 好きじゃないってこと? なんて口から出そうになったのを止められたのは良かったんじゃないだろうか。
 『嫌いじゃない』、か。
「……きみは」
「……え?」
「きみは、僕のことが好きなのかい?」
 彼はそう言った、ボクの目を真っ直ぐ見つめながら。
 その答えを返そうと口を開いたとき、上からふわっと手で口を塞がれてしまった。
「…………言葉はいらないよ。ただ………………これからの行動で示して」
 彼はそう言って笑った。光のない青色の瞳に吸い込まれそうだと錯覚しそうだった。

8/29/2024, 1:53:04 PM