お祭り
夜の闇に光がぽつぽつ灯り始める。
静けさが耳に痛いほどだった道も、
笑い声や、話し声がほら、また一つ二つ。
賑わう声を横目に、進んでいくと
先には赤い「門」
そこを潜れば何があるんだろう?
好奇心に負け「門」を潜った。
先にあったのはこの世とは思えない風景。
人の形をなさない生き物たちのお祭り。
見たこともないものや、食べ物
話をしてみると、自分たちと何も変わらない者たち。
怖いものは怖い。
悲しいことは悲しい。
楽しいは楽しい。
そんな当たり前の感情も同じだった。
楽しい時間が過ぎていく。
終わりの時間が近づいていく。
この「門」を引き返せば、きっと終わりが来るだろう。
この時間は、たった一度の気まぐれが起こした奇跡。
本当は交わらない二つの世界が交わり、
そして、離れていく。
寂しい。
けれど、例えもう2度と会えないとしても。
きっと今日笑ったことも。勇気を出してここを訪れたことも。
私は忘れないだろう。
みんなは忘れないだろう。
「門」を振り返っても、何もない。
遠くから聞こえる音楽も、賑わいの音も、
その全てが、一つのお別れを知らせる。
少し切なさを残す。そんな夜にお話し。
7/28/2023, 7:49:34 PM