しう

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夜の海、そこはあまりに寂しい。頼る明かりも人もいない。ただ、打ち寄せる波の音がするばかり…。
「はあ…」
 私は何かを言うこともなく、ただ何度目かになるため息をつく。
 私は夜の海が好きな質だ。身の丈に合っていると思う。真夏の昼、あのあつくて眩しい世界に私は存在しない。かといって、研ぎ澄まされた刃物のような鋭さもない。どっちつかずで中途半端な存在…。
それが紛れもない自分。
 だから、ただなにも考えず、誰の目につかないように心をしずめたくて時々、夜の砂浜を歩く…。
 “ピー”
 鋭く、どこか寂しい音がしてふと、顔を挙げた。すると、そこには優しく静かに夜の海を照らす月を見つけた。
 (ああ、そうか)
 と、唐突に感じた。
 「別にどちらかになる必要なんてないや」
 なぜか、泣きたいような気持ちになって久しぶりに声を出して笑いながら砂浜を走りぬけるー。
 

8/15/2023, 11:29:00 AM