月影

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何もない空間、私一人。
光はあるけれど、貴方はいない。
夢だと思いたいけれど、夢じゃないと誰かが言う。
私は声を張り上げ、貴方の名を呼ぶ。
絶えず呼ぶ。声は枯れ出せなくなる。
耳が痛くなるほど静寂が辺りに横たわる。
酷い孤独、胸が不安で埋もれる。
すると、何処からか蝉の鳴き声が聞こえ、私は振り返った。
貴方が大樹の下に立っていた。
私の足は無意識のまま、貴方の元へと向かっていた。
〈続〉

8/8/2025, 1:17:23 PM