蒼月の茜雲

Open App

テーマ“ブランコ”

「ブランコ、押してあげるね」
そう言った友人は、物凄い力で背中を押してきた。
結構な高さまで行ったから
「もう、良いよ!」
そう言って、後ろを振り返ったら
彼女は手を振って、笑顔で遠ざかっていく。
当然だけど地面に足が届かない。
勢いは、まだ止まりそうにない。
友人が離れていくのが怖くて
思わず手を離した……。

その後、何とか命を取り留めた私。
殆どの記憶は失われ、体も自由に動かなくなったけれど
最後にあの子が見せた、なんとも形容し難い笑顔は
ずっと消えない。
それだけが残っている。
自分の名前も家族も何もかも覚えていないのに。

あの、私を見捨てて去っていったのに、物凄く綺麗な笑顔をしていた、あの楽しそうな笑顔だけはずっと…。

2/2/2023, 1:05:51 AM