潮鮫

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たくましい君が好きだった。


いつだって僕の前を歩く君。
半分こでは多い方をくれる君。
行列はいつも僕に前を譲る君。
何にも怯まず、僕を守ってくれる君。
大口を開けて笑う、豪快な君。

そんな君が戦争に行って、ようやく帰ってきた。

背中には浴びたように銃痕が残っていて、
燦燦と降り注ぐ太陽に照らされた君の顔は
より青白く、くすんで見えた。




辛かったのかな。
怖かったのかな。
逃げたいと思ったのかな。

懐かしさで死にそうになっただろうか?
温かい布団。
みんなと過ごした狭い畳。
代々使い古された二輪車。
どれも当たっていそうで、当たっていなそうで。

君は死に際、何を思ったんだろう。



いつまでも続くはずだった。
いつまでも続いてほしかった。



濃緑の軍服は擦れ、錆びている。
綺麗だったあの眼差しは、もう見れない。


それでも、進まなければ。

響くケロイドは、君の証だ。
戦争を生き抜いた、僕のタトゥーだ。


今世の別れなんて、もう味わいたくない。

5/20/2024, 8:13:28 AM