時枝

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窓から見える景色に私は価値を感じない。
外に出て、直接見れば良いじゃないか。
あんな小さい窓からなんてなにも見えやしない。


私の部屋には、縦横30cmの小窓があった。開きもしない小窓だ。見える景色は空色1色。なんとつまらない窓なんだろう。
それに対して、兄の部屋には大きな窓があった。日中は照明がいらないくらい大きな窓。ただ大きいだけで見える景色は私の小窓と大差ない。でもいいなーって。よく分からないけどいいなーって思ったんだ。

生憎その日は雨だった。窓から見えるのは、帰り道と同じ鼠色。いつも通りだった。ただ、今日はちょっと寒い。布団に入ってあったまろうとすると、気持ち良い眠気に襲われた。

肌がひりひりする感覚で、目が覚めた。
小窓から一直線に伸びる太陽の日差し。あぁ、晴れたのか。
部屋いっぱいに広がる光の粒子を私は大きく吸う。
このなんとも言えない高揚感に、私は思わぬ勘違いをしてしまったらしい。

窓って良いな。

真っ赤な顔で呟いた。

9/25/2024, 1:07:14 PM