秋月

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今日は、雲ひとつない『青』空らしい。森では紅葉やいちょうが『紅』葉して見頃だとか。外で囀ずる鳥は角度によって『色』を変えるものもいるそうだ。全てがモノクロにしか見えないこの街の住人にはどうでもいいことだが。
この街は鳥籠のような巨大な鉄格子に囲まれ、街の外との往来は一切出来なくなっている。この街で産まれたものは、この街で育ち、そして死ぬのだ。

遠い昔、この街に外部と連絡がとれるお偉いさんがいた頃。どうしてこの街には色がわかる者がいないのかと尋ねたことがある。
そのお偉いさん曰く、ここは大規模な実験施設で、色を失った人間は色という概念をどの様にとらえるのか。という実験を行っていたらしい。
行っていた、と過去形なのはこの街の外に住む人間は皆、何だかが原因で滅んだからだそう。『モルモット扱いの俺等ァが生き残って、正しい人間様達が滅ぶってな皮肉な話だァな』そう言ってケケケと笑っていた。

この街を管理運営しているアンドロイドたちにもいずれ稼働限界が来る。出来るならば死ぬ前に、色鮮やかな花と言うものを見てみたいものだ。

5/1/2023, 11:24:13 PM