死者病棟。この病棟は、医者も手の施しようがない状態の者集まっている。勿論、医者でも延命治療しかする事が出来ないため、死ぬ者がほとんどだ。そこに、私の幼なじみが入院している。
私の幼なじみはいつも元気で、小さい頃はよく遊んでくれたものだ。
.......だが、高校に入学した途端、幼なじみの病気が判明した。それは、【心血失少症】。
とある時に体の中にある血液が不自然に不足し、最後は干からびて死んでいく。不足する条件はまだ明らかになっていないが、怪我をした時、出血の量が異様に多い場合、この病気だと判明される。その病気に、幼なじみはかかってしまったのだ。それで入院した幼なじみは、今は元気に過ごしている。今もこの病棟にいる。
ガララ。 扉を開ける音が開く。
「.....元気?」
「.....ん.....?あ!深冬!来てくれたんだ!」
幼なじみは元気そうだった。私が来て嬉しそうにする。
「うん。心配だしね。」
「そっか!あ、なんか食べる?って言ってもお見舞いの果物しかないけど....」
幼なじみはテーブルに乗せられた果物の籠を指差しながら言う。熟している物がほとんどで、美味しそうだった。
「いや、いいよ。要は食べる?食べるなら剥いてあげるけど。」
「.....んー.....いや、いいよ。お昼ご飯食べたばっかだからお腹いっぱいなんだ。」
「そっか。」
そういい、要は窓の外を見る。今日はちゃんと食べてくれたみたいで良かった。最近は痩せてばっかで心配だったから。
「......春だねぇ.....」
「うん。桜も満開。」
今は春。病棟の窓からは満開の桜が綺麗に見える。.....綺麗.....
「......さて、私はそろそろ帰るよ。死んでないか確認出来たしね。」
「え!?深冬それ目的で来たの!?」
驚いたような目をして叫ぶ。こんな調子ならまだまだ生きるな。と思いながら私は適当に返事をし、部屋から出ていった。
.....だけど、その年の夏。要の母親から突然電話がかかってきた。内容は、要が病気で死んだ、葬式に参加して欲しい。という内容だった。
急にそんな事を聞いて、私は唖然とした。人間、驚きすぎると声も出なくなると、その時初めて知った。なんで?要は一昨日まで本当に元気だった。いつもと変わらない声色、向日葵の様な笑顔。小さい頃と変わることのない、要だった。なのに、何故?しばらく、そんな事を考えていた。だが、段々と現実が見えてくると、色んな感情が見えてきた。
「.....ふ、っ.....うぐ.....ぅ.....」
いつの間にか、大粒の涙が流れてくる。ずっと仲良くしてくれた要。一人でいた時も、ずっと私と一緒にいてくれた。そんな要は、もういない。優しい、私の幼なじみで居てくれた彼は。
「.....ご、めん.....ごめんなさいぃ.....素直になれなくて......分かってあげられなくてぇ.....」
葬式当日、献花の時。私の順番が来た。一人一人、要への感謝や暖かい言葉を、花と一緒にに贈っていた。
「......要....」
死装束を纏った要は、優しいいつもの顔で、ただ眠っているだけの様にも見えた。
「.....ごめんね、要。今まで楽しかったよ。......あっちでも、楽しくね。」
そういい、私は白いカスミソウを供えた。
【白いカスミソウの花言葉】
・清らかな心
・無邪気
・幸福
・感謝
・親切
8/2/2023, 11:16:04 AM