そこは草原だった
風になびき、花や木が一つも無い、そんな草原。
中央には土でできた街道が、真っ直ぐと、地平線の向こうまで続いていた。
その道を、二人の旅人が話しながら歩いていた。
「本当に、この先に街があるんですか?」
灰色の、綿飴をちぎったような髪をした少年が、そう聞いた。全身を紺のマントで隠している。
「そのはずなんだけどね。なんせこの次元は、毎秒位置が変わっちゃうからね。めんどうだよ」
ベージュの髪を肩まで伸ばし、カーキのコートを羽織った女性が、そう答えた。
少し大人びて、それでいて無邪気な顔だ。
「確か、交易で盛んな街ですよね。
にしては、街道が整備されていないですけど」
「うーん、そうだねぇ……
まぁ、無かったら無かったで、その時考えよう」
「僕達の生活賭かってるんですからね!
この依頼をこなせなかったら、もう何かを質に入れるしか、穏便な手段は残されて無いですよ、やなぎさん」
やなぎと呼ばれた女性は、へいへい、と軽返事をした。
そうして喋りながら歩いていると、地平線の向こうに、建物が見え始めた。
「あ!あれですかね?僕、先行ってます!!」
少年は、鬼ごっこのように走り出し、その勢いでおもいっきり跳躍をした。
マントがその体を隠し、ぐにゃりと体が捻じ曲がる。
腕が翼となり、脚がもふもふの体毛に埋もれ、獲物を掴めそうな爪が生える。
それは人サイズの、灰色の梟だった。
梟はバサバサと、大きな翼をはためかせ、街の見える方向に向かって飛んでいった。
「ちょっと待ってレーラ、その街は多分…ってあーあ、行っちゃった」
レーラと呼ばれた少年、梟の姿はもう見えない。
やなぎも、駆け足でその後を追った。
数分走り、やっとレーラに辿り着いた。
彼は大きな梟の姿で、立ち尽くしていた。
やなぎは、彼が無言の理由をすぐさま悟った。
目の前にあったのは、街だった。確かに街だ。
火をつけたら全てが燃えそうな、木製の一軒家が立ち並び、中央には噴水と井戸がある。
奥には塔のような何かが、街を守るように建っている。
しかし、街が、街であるがための、それらがなかった。
「やなぎさん…これは…」
「ゴーストタウンだ。人なんて、いない。そんな街」
お題『街へ』×『幽霊』
1/28/2026, 10:48:29 AM