自転車に乗って(2023.8.14)
「あぁ〜あっっつぅ〜…」
騒がしい蝉の声に耳鳴りを感じながら、自転車置き場までのろのろと歩く。全く、どうして土曜日なのにわざわざ学校に来て、面倒くさい模試なんぞを受けなければならないのか。
こういう、気分がくさくさしているときは、何か気晴らしが必要だ。それも、とびきり爽快な。
「…よし」
置いてあった自転車に素早くキーを差して、荷物を適当に前カゴに放り込むと、力強くペダルを漕ぎ出した。
あっという間に遠ざかる校門、見慣れた景色、山、田畑、鉄塔…。
歩いている時は突き刺すように感じた強い太陽の光も、風を切って進む自転車に乗っていれば全く気にならない。誰も周りにいないのをいいことに、大声で歌い出したい気分だ。
少し息を切らせながら、緩やかな傾斜を上る。頂上について、ブレーキを握って一息ついてから、眼下の光景を眺めると、まぁなんとも長閑な田舎町である。
きっと、自分が生まれた頃から大して変わっていないであろう、そして、この先もきっとそう変わらないであろう風景。普段ならその刺激のなさに嘆息するところだが、ちょうど今のような、何か悩みごとがあるとき、不安なことがあるときにここにくると、その泰然とした様子に安心させられるのだ。
再びペダルを踏み込む。帰りは少し急な坂道だ。ブレーキをきかせるなんて日和ったことはしない。時折小石に乗り上げてひやっとするが、それもまた一興だ。ただただ、体全体を風が流れるのを感じた。
こういう青春もいいもんだよな、なんて、かっこつけて終わらさせてほしい。
8/15/2023, 9:00:21 AM