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「げーっ。将来の夢、だってよ。」

未来は、そう、俺の隣に座ってるヤツがそう言った。

「お前、未来って名前なのに将来の夢書くの嫌なのか?」

「それ、よく言われるけどゼッテーかんけぇない。」

まあ親が付けた名前ってだけだしな。あくまで俺達からしたら、ラベリング以上の価値はない。一人で完結してると、真っ白い作文用紙が嫌でも目に付く。
将来の夢、か。適当に書いたって良いけど、それは癪に障る。真面目に書くのも面倒くさすぎる。停滞した思考を堂々巡りさせていると、未来はまた話しかけてきた。

「おれさー、未来って書くけど、読みは「みく」なんだぜ。親は、カッケー。ロックだぜー。って言うけどさー」

酷く渋い顔をしながら言葉を濁す未来は、頭を抱えてブツブツと呻いている。

「いやさー、みくって女っぽい名前じゃんか。親がどんな想いをして付けたかよりもさー、今あるイジられによる羞恥っつーの?それのが余っ程苦痛だろって思うんよ。だって今ってリアルタイムで来るくせに予測できんし。マジ未来とか考えられるかっての。」

言いたいことだけ言って未来は作文用紙に殴り書きしていく。今が大事な未来は、先の事を考える気がないのだろう。適当に書いているのが分かる。それに触発されてか、俺も筆が進んでいく。鉛筆の走る音と、布擦れ、そして微かな風が感じられる。
これが未来の言う今なのだろう。だが俺にとっては、心地よくて眩しくて今が一番幸福だ。

題:今を生きる

7/20/2025, 11:06:28 AM