【時間よ止まれ】
「あ、そういえば、日曜ドラマの最新話見ましたか?」
「見ました見ました。今週も面白かったですよね」
時刻は23時を過ぎた頃。
2時間ほど前から退店する人が後を絶たなくなったファミレスで。
ドリンクバーだけで5時間居座る男女がいた。
彼らは今回で3回目のデートである。趣味のドラマや映画の話をしつつ、頭にはひとつの話題が過っていた。
告白。
誰が言い出したのか。
3回目のデートで告白しないと友達になってしまう。普段は不確かな情報に左右される彼らではない。どちらかと言うとそんなものを信じる人を冷めた目で見ていた。それでも告白という一大イベントを前にすると、不確かな情報にも縋りつきたくなる。
今日もし、告白しなかったら。
このまま関係が進まなかったら。
違う誰かに取られてしまうんじゃないか。
このファミレスの閉店は24時。ラストオーダーは23時半。
もうタイムリミットはすぐそこだ。
「そうそう、この前SNSで─」
違う。そんな話をしている場合じゃない。
「私の会社のお局がですね─」
こんなのいつだってできる。今じゃなくていいのに。
好きです。付き合ってください。
たったの一言が言えないでいた。
「俺、寝相すごく悪くて─」
「私も朝起きると布団が─」
あぁもう駄目だ。時間がきてしまう。
今日もまた、言えないでいる。
ほんの少し、勇気を出せばいい。
それだけで自分たちのすれ違いに気付けるのに。
勇気が出ないまま、3回目が終わる。
「(時間が止まればいいのに)」
「(そしたらずっと一緒にいれるのに)」
閉店を告げる音楽が、今日も鳴り響いた。
2/17/2025, 9:48:31 AM