【雫】
強い雨が窓に打ちつけるような荒天が好きだった。明瞭なはずのガラス越しの景色が歪んで曖昧になる、その様を眺めるのが好きだった。よく飽きないものだとあなたはよく呆れていて、わたしはそんなあなたの声を聞きながら、窓のそばに座り込み、嵐が過ぎ去るのをじっと待っていた。
そういう日々を、思い出す。やってきた嵐に耐える窓ガラスの上を、数えきれないほどの雫が滴っていく。不意に泣きたくなったのは、そうやって眺める景色の寂しさと空しさを知ってしまったからだ。わたしひとりで眺める荒天の世界は物悲しく、いつだって言い表せない不安に満ちている。ぽつり、ひときわ大きな雨粒が床に落ちた。背後からあなたの声は、聞こえない。
4/21/2024, 10:49:54 AM