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2023/2/5
「またいらして下さいね。」
そう言って名刺を差し出された。受け取ろうと伸ばした手を名刺はスルリと抜け女の唇に当てられる。
「約束。」
今度こそ名刺は手渡された。

受け取った名詞を見つつ女のはにかみを思い出す。わざわざ名刺にkissマークを付けて渡してきた。
(いや、それが商売女の常套手段かもしれない。)
『貴方だけ。』そう特別感を匂わせて客の心を掴む。あの初々しい表情も演技なのだろう。分かっていてもまんざらでも無い気分になるのだから、それこそ女の手の平の上ということだ。

2/5/2023, 3:20:24 AM