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 大慌てで新幹線に飛び乗った。
 外の冷気で冷え切っていると思っていたけど、空調で暖をとっても一向に手の震えが止まない。焦りと不安でとにかく落ち着かない。無理矢理目を瞑って深呼吸を繰り返す。それでも嫌な予感が頭に浮かんで目を開けてしまった。
 早く。
 新幹線の速度は変わらない。
 早く、早く。
 握り締めたスマホが手汗で滑り落ちそうになる。
 早く。

 何の前触れもなかった。それまで音沙汰もなかった。突然危篤だと連絡が来た。
 元々物静かな人だったけど、最期までそっといなくなりそうだなんて。

 じわじわ目に涙が溜まる。
 まだだ。まだ何もわからない。
 自分に言い聞かせる。

 間に合え。
 大好きな貴方の元へ向かう車中は、生きた心地がしなかった。



『そっと』『あなたのもとへ』

1/16/2025, 1:36:10 AM