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終電に乗って帰ってきて家に着いた瞬間、壁に手をつき、倒れるようにドサッと床に座った。
人生に疲れた…。最近は何をしても駄目だ。
自慢ではないが顔が良かった俺は、学生のとき、妬み恨み嫉みすべてを経験してきた。面倒くさかったから無反応を貫いていた。陰口を言われたって、度が過ぎる悪戯をされたって、どうでもよかった。

でもある日突然、何かがプチッと切れた。限界が来たんだ。生きる意味をなくした。もう嫌になった。
用意していたロープを、椅子の上に立って天井にくくる。ただ、俺は後悔を残してこの世を去りたくない。椅子に立った状態で、ズボンのポケットからスマホを取り出す。メッセージアプリをタップし、幼馴染とのトーク画面を開いた。


智くん
こんな夜遅くにごめんね
俺、貴方が好き
恋愛の意味、として
突然すぎるかな?
男からの告白なんて気持ち悪いよね
昔から貴方を見ていて、いつの間にか気づいたんだ
これは恋なんだって
ふにゃっと笑ったその顔を見てドキッとするし、真面目に考えてるとき無意識に唇を噛んでいるのが可愛いし、穏やかな表情してるのにやってることはワイルドで…
好きなところを挙げたらキリがない
告白するの、こんなに遅くなっちゃった
俺は小心者だから告白の返事は聞きたくないな、なんて笑
じゃあ、またね


送信し終わり、スマホの電源を落とす。
暗い画面にポタポタと落ちてくる。涙だ。なんの涙だろう?無事告白できて安心したのかもなあ…ふふ。良かった。これでもう、この世にやり残したことはない。
ロープでできた輪っかに、頭を通す。


俺は椅子を蹴った。

9/27/2025, 1:23:03 PM