『波にさらわれた手紙』
えっと…、ふむ
やはり今日も届きますね
宛名のない手紙…
おや?
いらっしゃったんですね
気付かずにすみません
ここは 星の図書館
簡単に言えば、誰もが辿り着ける
…かもしれない、
夢の世界の図書館です
図書館とはいいましたが
ここには割と色んなことができます
夢の世界ですから
ですが、例えば今私が持ってるこの本や手紙のように、ひとつずつを丁寧に本や紙や絵などに閉じて、そして実際の図書館のように区分を分けることで、必要なものを整理できるので。そしてそれを繰り返していくうちに、図書館のように仕上がりました
なのでここを私は
星の図書館 としたんです
ん?この手紙ですか?
実はこれ、「誰かの手紙」なんです
これには理由がありまして…
そうですね、あなたは日頃
インターネットは使いますよね?
この手紙は、落とし主の思いが考えが書かれた手紙なんですが、そのインターネットというのは時として、その情報量の多さから荒波や津波のように形を変え、利用者の心がその波に飲みこまれてしまうんですよ。そしてその手紙のほとんどが宛名が書かれてないんです。
この星の図書館は夢の世界
そしてここは図書館そのものは私の意思で変えない限り滅多に変わらないんですが、環境はある程度変わるんです。例えば本来ここは平原や丘や山の上にあるようなイメージであることが多いんですが、今回のように海岸沿いに建ち、そしてこのように 宛名の無い手紙 が、この図書館に届くのですよ。たまには宛名があるので、できるだけそっと、その人の夢を通してお返しできることもあるんですが…。大抵はこちらで保管してるんですよ。もしもこちらの図書館に来ることが出来た人には、少しづつ見つけてもらったりもしてるんですが、いかんせん量も量ですし、そもそも落とし主が必ずその人の元に戻るかも運次第ですからね。
あなたも一応見て見ますか?この手紙を
えぇ、どうぞ
むしろ、少しでも協力して貰えると本当にとても助かりますので。
そうですか、あなたのでしたか
良かったですね、みつかって
…なくしたことにも気づいてなかった?
ええ、それは…ありえますよ
先程も言いましたとおり、この手紙たちは波にさらわれてきた手紙たちです。持ち主が落としたかどうかもわからないまま、ここに届くんです。
そうですね、例えば…
あなたは、なにか情報を見聞きした時、気持ちを押さえ込んだことはありませんか?自分にとっての言いたいことや感じたことが、世間の情報や考え方と全く違うが故に、私の考えはは間違ってるのでは?私はおかしいのかな?…のような思考になったり、気持ちを押し殺してしまったりしたことはありませんか?そのようなことが繰り返し起こると、思いの手紙として心の奥にしまい込まれたまま溜まっていくんです。本音としてどこにも吐き出せないまま…。そしてネットの津波が襲ってきて、その手紙をさらってしまう。
今回はたまたまあなたの手紙であり、それを私が拾った形になりましたが、これは本当に偶然のラッキーです。本来はなかなか本人の元には戻せません。もしかしたらあなたが落とした手紙は、まだほかにも沢山あるかもしれませんね。この思いの手紙は、その落とし主の 思いのその先の本当の思いに気付くための重要な手がかりにもなりますから。
どうぞ、もし時間があるなら、
ぜひ見に来てください
それに、その手紙じゃなくても
この図書館なら、色んな音や物や物語などありますので、遊びに見に来てください。これも何かの縁です。今のあなたの心の傷、あるいは今は感じられないほどに忘れてしまった心の奥深くの傷に ほんの少しでも治すお手伝いをする場所でもありますので。
ええもちろん、おいでください
あなたさえ良ければ、元々案内するつもりでしたので。
では改めて、
ようこそ、星の図書館へ
〜シロツメ ナナシ〜
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8/3/2025, 5:45:25 AM