ににににににに

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#手を取り合って

最後に手を繋いだのはいつだったかな
幼稚園の頃は、繋いだら繋ぎ返してくれて
小学生の頃は、手を握っても握り返してはくれなくて
中学生の頃は、繋ぐこともできなくなって
それから、俺から手を繋ぎに行くこともしなくなった

手を繋ぐことで人の暖かみを感じれるのが好きだった
恋愛的な気持ちで手を繋ぎたいとは思ったことなかったけど、手を繋ぐことで周りからからかわれ、変に噂がたつのが嫌だったのだろう。いるまは。
それが分かってたから、手を握り返してくれなくても、繋ぎさえさせてくれなくても、何も言わなかった

特に、いるまに固執するほどの事でもないし。
そもそも、ただの幼馴染で腐れ縁みたいなものだ。いるまは俺のこと「嫌い」らしいし
他の人と手を繋げばいいや、という雑な考えだった

___

「あれ、いるま?」

「ん、あぁ、らんか」

「帰り?一緒に帰ろーよ」

「いいけど」
そう言っているまは、さっきまで付けてたイヤホンを外す
嫌いな割に、いるまは俺に優しい
他愛のない話をしながら、ゆっくりと帰路につく
ふと、いるまの手が俺の手に触れた気がして、つい癖で指を絡める。いるまの体がびくつき、俺もいるまの手を握りしめていた事に気付く

「あ、ごめん。つい癖で」
そう言うと、眉をひそめるいるま
あぁ、そういえばこいつ、俺のこと嫌いだったな、早く離した方がいいか
絡ませていた指をゆるめ、手を離そうとすると、珍しいことにいるまの指が俺の手を握り返してくる
思ったよりも大きくてごつごつしていて、"昔の手じゃないな"なんて思うと同時に、昔よりも暖かいなとも思う
人の暖かさと言うより、熱っぽい暖かさのような気もするけど
いるまの顔を見ようとしても、いるまは俺がいる逆側を向いて、俺からは赤くしたうなじと耳だけが見える
「俺ね、いるまと手を繋ぐのがいちばん好き」

それには特に意味はなくて、ずっと小さい頃から一緒で、ただ落ち着くと言うだけの意味を込めていた
それはいるまも分かっていたはずなのに、思ったよりもこっちを見たときのいるまの顔が赤くて、つい笑ってしまう
あぁ、そういうことね。なんて下手くそな照れ隠しだったんだ、可愛いところもあるな。…だからと言って、俺にいるまへの恋心が芽生える訳ではないけれど。まぁ、いるまが俺を落としてくれるまで遊んであげようかな

7/15/2024, 7:27:08 AM