ふたり
ひとりぼっちでいると、ふいに、宇宙飛行士になったような気持ちになる。
無重力の空間に、ぽつんと浮かんでる。
まわりには何もない。ただ、静かな光が、遠くから差し込んでくるだけ。
その光は、とても綺麗で、でも、どこか寂しい。
そんな時に、ふたりでいることを思い出す。
同じ重力の中で、ちゃんと立って、ちゃんと歩いて。
隣にいるあなたの呼吸の音や、ふいに触れた指先の温もり。
当たり前だと思っていたことが、本当は、ものすごく特別なことだったんだと、
胸の奥がぎゅっとなる。
ふたりでいることは、もう、宇宙飛行士じゃない。
ちゃんと地球に降り立って、土を踏みしめている。
風の匂いを感じて、雨の音を聴いて、
同じ時間の中に、いっしょにいる。
そうか、私たちは、お互いの宇宙だったんだ。
あなたの重力があるから、私はここにいられる。
私の重力があるから、あなたはそこにいられる。
ふたりでひとつの、小さな惑星。
どこへ行くにも、いっしょだね。
8/30/2025, 11:21:18 PM