麦わら帽子
「あはは見て!とてもきれいだよ!
ほら早く来なよ!」
「嗚呼そうだな。」
青空に青い海あまりの青さに目が痛くなる様な青さと絵画のように綺麗すぎる目の前の
情景に不気味さや空恐ろしいものを感じた。
君の白百合のようなワンピースが潮風に靡かれ
膨らんだと思えば咲いて、
君は白波の様に波立つワンピースの中で
泳いでる。
裸足で浅瀬の寄せたり引いたりと揶揄う様な
波と攫われまいと遊んで
麦わら帽子が風に飛ばされないように両手で
強く握ってる。
ありきたりな映画のワンシーンのようだった
そんな彼女がふとまるで泡のように
青い夏に溶けてしまうのではないかと
怖くなった。
空恐ろしさを上手く言語化出来ないもどかしさ、
子供の言い訳ようなおかしな文句、
僕を置いて満面の笑みで楽しむ彼女の無神経さに苛立ちと焦燥感を覚える。
早くここから逃げ出したい。
「もう帰ろう。」
僕は君の細くしろい手首を
彼女がちゃんとそこに実在する事を確かめるように離さないように強く握った。
麦わら帽子を抑えてた手が一つ失った途端
強い潮風に攫われ麦わら帽子が高く飛んで
青い夏に消化された。
あ…やってしまった
僕はただ高く舞い上がる麦わら帽子を呆然と
自分がなにも出来ないという無力感に
浸りながら事の顛末を見ていた。
あの日から
麦わら帽子を見つけると思い出すかのように
あの青い夏に溶けた君を探すんだ。
8/13/2024, 11:59:13 AM