朝の光がゆっくりと差し込む。
いつもの道の角、フェンスの下。
最初は花束がいくつか置かれていた。
誰かが死んだ。
誰かがわずかな時間、ここを覚えていた。
でも、その記憶は長くは続かなかった。
三日で花はしおれ、色を失い、
袋は泥にまみれて破れていく。
誰も管理しない。
誰も来ない。
置かれたものはただのゴミとなり、風に散らされて、
朝の光の中でじわじわと溶けていく。
カラスが何かをついばんで、
空はただ静かに明るくなるだけ。
通り過ぎる俺は、
その場所を見て見ぬふりをする。
忘れられた“誰か”の跡。
もう誰も振り返らず、
ただ、朝が来る。
でも、その光は何も救わない。
5/22/2025, 3:07:00 AM