"雫"
長袖のTシャツの裾を整え着替えを終えると、窓の外を見る。
窓の外側に雫が一つ、また一つとつく。微かに雨粒が窓ガラスを打ちつける音も聞こえる。
「散歩は無しだな」
「みぃーん」
ハナが悲しそうな声を漏らす。
昨日、あの後数時間程ほっといた後心配で居室に戻ると、扉を開けた瞬間「みゃあん」という声と共に立ち上がって足元に来た。
驚きながらご飯皿を見ると、ドライフードが入っていた皿が綺麗に空っぽになっていた。
こいつ猫だったと思い出したのと同時に、心配して損したという気持ちが湧き上がった。
一度部屋を出てインスタントコーヒーを作り、インスタントコーヒーで満たされたたマグカップを持って、部屋に戻り椅子に座ると──ジャンプをしてはいけないと分かっているのだろう──、膝の上に乗りたそうに足元をうろつく。
一旦マグカップをテーブルに置いて両手でハナの身体を持ち上げ膝の上に乗せてあげると身体を丸くする。
術後間もない時の雨の日は、手術痕が多少なりとも痛んだり疼いたりする。
痛みや疼きを少しでも和らげるよう、マグカップに口をつけインスタントコーヒーを啜りながらハナの背を撫でる。
窓の外を眺めながらしばらくハナの背を撫でていると、落ち着いてきたのかゴロゴロと喉を鳴らし始めた。
ふ、と小さく笑いながら、再びインスタントコーヒーを啜った。
4/21/2024, 1:15:38 PM