ミミッキュ

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"物憂げな空"

 患者を見送り、診察室に戻って時計を見る。針は三時四十八分を指している。
──空気入れ替えるか。
 診察室の向かい、患者用ベッドが三床置かれた処置室に入り窓に近付いて窓の鍵に手を置く。瞬間、ふと窓の外に視線を向ける。
 雪や雨は降っていないが空に雲が散らばっていて半分晴れ半分曇り、夕方近くでほんのり茜色に染っていて、すっきりしない空模様になっている。
──何となく気が塞ぐなぁ……。
 窓の鍵を開けて五cm程開けて、水分補給に給湯室に向かって、棚から取り出したコップの中を水道水で満たして口に含み、流し込む。水道水の冷たさが幾らか身を引き締め、水分が乾いた身体に染み渡る。
「ふぅ……」
 小さく息を吐いて、再び一口流し込む。
 よし、と心の中で小さく呟き気合を入れ、残りは診察室に持って行こうとコップを持ったまま診察室に向かってデスクに置く。
──窓も、これ以上は寒いし閉めよう。
 処置室に入り、窓を閉めて鍵をかける。
──明日はちゃんと晴れろよ。
 念を送るように空を睨め上げて、診察室に戻った。

2/25/2024, 11:38:22 AM