作家志望の高校生

Open App

ある夏の日の、空が夕陽に染まる頃。
瞼の裏にへばり付いた赤色が、今でも離れそうにない。
暑い日が続いていた中、その日は珍しく少しだけ涼しかった。
降り注いだ夕立が空気を洗って、水を含んだ重たい空気がべたついて、肌に張り付く制服が気持ち悪かった記憶が新しい。
そんな中、俺の親友は死んだ。
底抜けに明るくて、憎めない、大型犬みたいな奴。
何故死んだのか誰にも分からなくて、皆があいつの死を悼んでいた。
けれど、俺は知っている。あいつが、どうして死んだのか。
だって、奴は俺の目の前で飛び降りたのだ。
俺に一生消えない傷跡を残して、呪いみたいな笑顔で、燃え盛る夏の空に消えていった。
あいつが死んだのは俺のせいだ。
あいつが大事にしていたもの、守りたかったもの、全部、俺がめちゃくちゃにした。
なんだかんだ言って優しかった彼は笑顔でいたけれど、あいつの夢はもう二度と返ってこない。
彼は性格にそぐわず、ピアニストを目指していた。
あいつの弾くピアノは優しい音がして、どこか、眠れない夜に母が聞かせてくれた子守唄に似ている。
そんな音を、俺が奪った。
俺が、ふざけて肝試しに行こうなんて言わなければ。
肝試しの場所に、暗い山を選ばなければ。
そうすれば、あいつは今もピアノを弾いていられた。
転んで手首を痛めることも無かった。
あいつが死んだのは、あいつが夢を失ったのは、俺のせいだ。
死んで詫びる、なんて言って許されようとはしない。
俺が死んだ程度で、俺の罪が赦されるわけがない。
俺ができることはただ一つ。
あいつのことを、俺の罪を忘れず、ずっとずっと、罪の意識に苛まれながら生き続けること。
それが、あいつが俺にかけた最期の呪いであり、俺にできる唯一の償いだ。
だから、どれだけ辛くなっても、どれだけ死にたくなっても、俺が死ぬことは赦されない。
今日と、いつまでも忘れられないまま、あの赤の中を生きている。

テーマ:忘れられない、いつまでも

5/10/2026, 9:42:42 AM