あの日、彼女が僕に触れた。彼女の手は、冷たかった。その日は肌寒かったからか、更に冷たい気がした。僕は彼女の手を取って、それを優しく両手で包み込んだ。彼女はそれを、じっと見入っていた。僕は彼女を可愛らしく思って、穏やかな気持ちになっていた。彼女の手に、段々と温もりが集まってきていた。僕は彼女の手を離したくなかった。「ねえ、暖かい?」僕は彼女に聞いた。もう充分暖かい筈だった。しかし彼女はこう言った。「まだ、もう少し。もっと温かくなりたい」
2/28/2025, 1:36:04 PM