蒼月の茜雲

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テーマ“永遠に”

それは、偶然だった。
本屋で同じ本を手に取ったり
パン屋さんで最後の1つを譲り合ったり
勤めていた職場に転勤して来たり…。
偶然って三回続くと
運命なんだと、随分昔に誰からか聞いたことがある。

そうして、お互いに同じ頃から気になっていた事が判明し
出会って数ヶ月で、私は彼と
交際を始めた。
好きな本、好きな食べ物、好きな色…
色々接点があり、本当に運命なのだと信じていた。

…そう。
婚姻届を出し、彼の家に引っ越すまでは。
「ようこそ!」
彼は、私を笑顔で迎え入れた。
まず、玄関に既視感を感じた。
玄関に飾ってある花、スリッパ、芳香剤
トイレの敷きマット、便座カバー
キッチンのお玉、包丁、菜箸、フライ返し
冷蔵庫、電子レンジ、鍋各種…
寝室のベッド、布団、シーツ、毛布、ハンガー…
全て、私が使用しているものと同じだった。

「ね、ねぇ、私…」
「うん?」
彼は私に微笑む。
「どうかした?」
どうかしないほうがおかしい…。
「一緒に住むってなって、俺のこと嫌いになった?」
「そんな事は…無い…」
けれど、ここまで一致するってある?
「じゃあ、ずっと一緒に居ようね」
「う、うん…」
私もしかして、一番危ない人と結婚してしまったのでは…?
「あ。永遠に、共に過ごそうね?」


…偶然が三回続くとストーカーの可能性…。

11/1/2022, 12:22:17 PM