ほろ

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「あれ、今日先生休み?」
昼休みの終わりかけ。見たことのない女の先生がやってきて授業の準備を始めたので、前の席の奴に聞いてみる。
奴は一瞬女の先生を見たあと、何かを思い出すように宙を見た。
「先生って志賀セン? あー、風邪引いたらしいよ」
「風邪?」
「俺も詳しくは知らんけど、熱出たっては聞いた」
「ふうん……」
机の下でスマホに指を滑らせ、先生に連絡する。
すぐに既読がついて、『ぼつしやう』とだけ返ってきた。何のことだ、と逡巡。『没収』か、と思い至る。熱が出てても学校の規律を気にするのは、さすが先生。だけど、誤字も気にせず送ってくる辺り、相当熱が酷いらしい。
「ダメだなぁ、先生」
呟いて、スマホをスリープにした。
「なんか言った?」
「んーん。教えてくれてありがと」
「おー」
先生は、いつまで経っても俺を頼ってくれない。
誰よりも先生のこと心配してるし、大好きなのに。いつだって頼ってくれていいのに。

「帰りに何か買っていってあげよー」

どうせまた迷惑そうな顔をするんだろうけど、先生のためなら何だってするからね。

2/16/2024, 3:08:47 PM