朝靄の中で一人佇む。
あの高い塔を見上げながら、冷たい太陽の光を受ける。
遠い昔はとても暖かくて、失明する程の光を放っていた。けれども今は―――光を失いつつある。
今日は何処へ行こうか?
掴みたかった未来は遠く⋯⋯遠くへと弧を描きながら飛んで行った。
だからこそ、今の私達は今日を生きるのに精一杯で、広い世界の中で迷子になっている。
どうしたら、遠すぎるあの未来を掴めるの?
すれ違った親子の会話に、思考を巡らせるけれど⋯⋯答えなんて出なくて、きっとこれが私達の運命なんだと、在り来りな答えに辿り着くばかり。
もっと私が賢ければ違う未来もあったのだろうか?
そんな事を思いながら、私は結局いつもの場所へと歩き出していた。
聳える灰色の塔と、冷たい太陽の光を反射する水面。生い茂る草木が風に揺れる音と、ふわりと香る苔の香り。
重たく透ける空には雲一つなく、いつかこの場所で囀っていた鳥達も今は遠く⋯⋯もう何年も姿を見ていなかった。
残された時を数えながら、私は今日もこの場所で水面を見つめる。
もう生物すら居なくなった水の中で、泳ぐ夢を何度も見続けては―――ぐっと堪えてを繰り返す。
残された時間が僅かなら、いっそ今⋯⋯私の時を止めてしまおうか。
そんな考えに浸りながら、私はまた、聳える灰色の塔を見上げる。
その奥に広がる青空と冷たい太陽が世界を照らす。
淡い光が反射して塔のガラスがキラキラと光る。
風に揺れる草木の音と苔の香りに身を委ねながら、揺れる水面に視線を戻して⋯⋯掴めたはずの未来を思う。
水面は静かに揺れながら淡い光を反射させて、私を今日も待っている。
4/12/2025, 2:25:21 PM