Theme :三日月
星々の中に沈んだ三日月。
それを見る度に、俺は誰も傷つけなくて済むという安堵と、この三日月もいずれ美しく輝く満月になることへの恐怖を覚える。
あと2週間もすれば、あの三日月は星の光をも呑み込んでしまう満月になることだろう。星の光だけでなく、俺の人としての理性さえ呑み込んでしまう。
俺は獣の本能に溺れ、誰彼構わず人を襲って傷つけてしまうだろう。
人狼の呪われた本能に逆らうことはできない。
俺は誰も傷つけたくない。ただ静かに穏やかに人として暮らしたいだけだ。
だが、満月はそれを許してはくれない。
許してくれるのは、月も浮かばない夜の闇とこの儚い三日月だけだ。
神様、どうかこれ以上、俺に誰も傷つけさせないでください。
何度目かわからない祈りを三日月に捧げる。
俺の願いは星々に遮られ、きっと三日月に届くことはないのだろう。
それでも俺は祈り続ける。呪われた運命から解放されるその日まで、ずっと。
1/9/2024, 1:28:48 PM