シシー

Open App

 バカには可能性がある。

 よく、勉強ができなくてもいい、とか言う人いるけどどのレベルの話なんだと聞きたい。言葉を理解して話せればいいのか、文字が書ければいいのか。お釣りの計算ができるだけの知識、テレビや新聞の情報を精査できるだけの知識、物事を効率的に回せる頭脳や器用さ。

 バカの基準はどこにある?

 忙しいという理由でゲームを与えられた。一人遊びできるように、手間を減らすために、時間を金で買う。
小さい頃はそれでよかった。親も周りも目の届く範囲で大人しくしている子どもは賢いと褒めた。
成長すると大人しいだけの子どもに不安を覚え無理やり外に放り出した。人間関係や勉強、社会経験を積んで大人になっても困らない準備をしろと叱りつける。なのに門限だの家族サービスだの金銭面などで子ども扱いをしてあらゆる活動に制限をかける。
 ゲームなんて、と与えて得をした人がそれを言うのだ。


 息を吸う。息を吐く。
当たり前のように褒められた生活をいきなり奪って怒鳴りときには手を上げる。
そりゃあ反抗したくなる。するに決まってる。今まで認められていたのに環境が変わるのを境に悪だと怒鳴られるのだから。
 息を吸う。息を吐く。
画面の向こうの友人は遥か海の向こうで笑っている。人間に生まれた宿命だと言った。納得できなくて不満をつらつらと並べた。

 ドアが開く。荒々しく、ノックという礼儀も欠いて、非常識だと怒鳴りつけてくる非常識な人が来た。
俺が英語で話しているのを目の当たりにして、目を輝かせた。学校の勉強にはついていけなくてバカだと罵った俺を天才だと評した。

 その日からまたゲームを与えられた。

 息苦しい。友人と話していただけだ。誰も教えてくれなかった優しさも喜怒哀楽もゲームを通じて友人が教えてくれた。それだけなのに、それだけを強制するのか。

 本当はさ、他の言語だって話すだけならできるんだ。
 ゲームの中ならあらゆる言語や知識が飛び交ってる。
 間違えてもやり直せる。
 失敗を重ねて経験値を貯めて知識も技術も増えていく。

 何より、大切な友人ができるんだ。



「…もう壊さないでくれよ」



                【題:酸素】

5/15/2025, 2:51:14 AM