「もう少し、具体的なエピソードはありますか」
「それは短所ではありませんよね」
「他に、あなたをアピールするお話はありますか」
あーあ、またダメだな、これ。
しどろもどろに話しながら、俯瞰した自分がいた。
そんなに銃口向けなくてもいいじゃん。
開始早々、集中砲火にクロスファイア。
すでに心は蜂の巣もよう。
「では最後に、何か聞いておきたいことはありますか」
もうどうにでもなれっての。
人生を決めるはずの面接が他人事に思えてくる。
練りに練って用意した質問を適当にぶつけ、
そそくさと会場を去った。
冷静になると、俺はひどく落ち込んだ。
ただでさえ能無しなのに、途中で諦めてどうすんだ。
電車内でのひとり反省会。自分に腹が立つ。
でも、後半は悪くなかった。
少なくとも、話したいことは話せた。
何でだ? あれだ。やけになったからだ。
蜂の巣の心は、思ったより軽く、丈夫らしい。
何となく、コツを掴んだという実感があった。
「あれ、先輩。奇遇すね。面接どうでした?」
「まだまだこれからだっての」
「そうなんすか。先輩、スーツ似合いますね」
「ああ? 冷やかすんじゃねえよ」
眉間に皺を寄せて、俺はそっとはにかむ。
4/23/2023, 12:58:41 PM