「左手が寂しい。」
ずいぶん可愛いことを言うんだな、と思った。
僕は右手で、彼女の冷たい左手をくるんでやった。
「右手も寂しいわ。」
そういうので、右手も手を繋いでやった。
時計台が真夜中を告げる。ライトアップされた木々が僕らを照らすから、こんな夜でも寂しくはなかった。
「唇も、寂しいって言ってる。」
見つめあって、寂しがり屋な彼女に僕に残る全ての愛をあげた。
「じゃあね、」
リップを塗り直して、両手をジャンパーのポケットにしまって、それから彼女はコツコツと音を立てて行ってしまった。
もう僕は必要ないんだろうな、
僕はというと、寂しがり屋が移ってしまったのかもしれない。もう君に会いたくなって、それで、不覚にも泣いてしまった。
1/19/2024, 12:14:11 PM