しるべにねがうは

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ただひとりのきみへ

「『自分は今、外部から攻撃を受けている』、そう気づく事が第一歩なのですわ。傷つけられていることを知る。傷ついたことをしる。傷を認識して初めて、脳がそれを治そうとします」
「…………それ、当たり前の話じゃないか?」
「ええ、至極当然真っ当な話です。ですが忘れている方も多いですのよ、当たり前のことだから」
「いや待て、気付かない奴もいるってこと?痛いじゃん怪我したら。わかんねぇの?」
「そこそこいますわよ、傷つけられる事が当たり前になっている人、傷がある事が当たり前になっている人。現代社会を支える接客業やサラリーマンの方は心当たりあるのではないでしょうか」
「過労死ってやつ?あれ疲労回復しきらねぇうちに更に体酷使してってやつだっけか……まぁ間違いではない?」

それも問題の一つではありますけれど。お嬢は一旦言葉を区切った。10歳より前から陰陽師の道を選んだって聞いたから、当時の事を覚えてるのかもしれない。想像つかねぇ。
最近聞かなくなってきた単語だよな。いろいろ整備されたらしいけど。ところで陰陽師にも労働基準法って適用されんの?
そういうイメージ全くないけど大丈夫か。
俺の心配をよそに話が再開した。

「パワハラモラハラ、人権侵害などが最近話題に上がりやすいですが。傷付けている方も傷つけられている方も、それが日常になっていると気がつけませんからね……『お前は仕事の一つも満足に出来ない愚図だ』、『お前の代わりなんていくらでもいる』、『ここ以外じゃお前はやっていけない』…」
「途中から変だよな、『辞めていいのか辞めちゃ困るのかどっちだよ』ってなる」
「『八つ当たりしてもやり返してこないお前に辞められたら俺が困るが仕事の手はほしい』、依存ですわね」
「力関係逆転してるよな」
「加害者は被害者に依存している事に自覚がない場合が多いです、暴力で自分が上であると思い込んでいる」

この場合の暴力は単純な腕力だけではない。社会的力関係、法的力関係。社長と社員、親と子供、教師と生徒。
社会的役割なんて上辺に過ぎない。
お互いに役を被っているに過ぎない。
今日をうまく回すために。

だって、全てをとっぱらったら、ただの1人の人間に過ぎない。

大統領だって総理大臣だって社長だって部長だって。
赤ん坊だって孤児だって平社員だってホームレスだって。

「この世に生まれてご飯を食べて人を恨んで寝て起きて。ね。同じですのよね。人に愛されて育って。いつか死んで。強い未練があればおばけになって。一緒ですのよね」

自分を偉いと思い込んでいる人間ほど、支えられている事を忘れている。
自分を強いと思い込んでいる人間ほど、自分の弱さを忘れている。

「………………本日の教訓は?」
「自分を大事にする事を忘れない、自分を大事にしない人間を大事にすることはしてはいけない。会社は社員1人欠けても回るように出来ていなければいけないですが、貴方の人生から貴方が損なわれたら何も回らない。会社という組織は貴方の人生を保障しない」
「社員は貴方の奴隷ではない、も追加しようぜ」

「今日を生き抜く貴方にエールを」
「また明日会おうな」


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楽しい仕事がしたいなの心
しかし楽しいを仕事にするとノルマがしんどくなる
難しいですね

1/19/2025, 11:41:53 AM